それから一か月…
それから一か月がたちました。
星くんと泉先輩は、業務に試験勉強にと、あいかわらず忙しい毎日を送っています。
「いよいよ明日だね。星くん」
「…はい。今から緊張しますね」
八木くんのマンションからの帰り道、すっかり日が落ちた冬の街は、どこかさびしげです。
「あなたが、あんまり遅いから。
私もう、テキスト2周しちゃったわよ」
「…なはは。すみません。
先輩だけ先に、試験を受けてもらってもよかったのに」
「私が先にベーシック受かって、おまけにスタンダードまで先に受かっちゃったら、
星くんカッコつかないでしょ。
業務改善部隊のリーダーとして」
「……先輩、ありがとうございます……」
星くんは、泉先輩が気を使ってくれていたことを知り、
ジーンと胸に暖かいものがこみ上げてくるのを感じました。
「また、私だけ合格…ってのはカンベンしてよ。
…ホント大丈夫なんでしょーね?星くん」
「は、はい。おそらく…大丈夫かと…」
「自信がないんだなあ……もう!」
泉先輩はピョンと星くんを追い越すと、振り向きざまに視線を合わせます。
「もっと自信を持ってくれていいのに。
VBAも、"その他のことも"………ね!」
「"その他のこと"………ですか?」
星くんは泉先輩に見つめられて、胸がドキドキと高鳴ります。
彼女はきびすを返すと、
「あ、もう駅近いから。
…送ってくれてありがとね星くん。
明日がんばろーね!」
そう言って、小走りに駆けていきました。