「えっと、八木………さん。
相談したい開発案件があるので、手が空いたらちょっといいですか?」
PCのセットアップをしている八木くんの背後から、星くんが声をかけます。
「はい、星主任。
一段落したので、今からで大丈夫ですよ」
八木くんは席を立ちあがると、星くんと一緒にミーティングスペースに入って行きました。
「八木、これなんだけど…。
今まで、手つかずだった案件があるんだ」
星くんはいつもの口調に戻ると、机の上に資料を広げました。
「小口課長からの案件で、営業の進捗管理をやりたいそうなんだ。
今は、各員が入力したExcelブックをかき集め、手作業で全体の進捗管理をやってるんだけど……、
すごく時間がかかるし、間違いも多いらしいんだ…」
「なるほど。
複数のユーザーが共有できるシステムがほしいんだな」
八木くんも、普段の口調に戻っています。
二人は、広げた資料に目を走らせました。
「そうなんだ…。
だけど、複数のユーザーが同時に使うVBAのシステムなんて、どうやったらいいか見当もつかないし…、
ずっと塩漬けになってた案件なんだよ……」
八木くんは、口をへの字に結ぶと。
資料を見つめながら黙考します。
「これは、Excelの機能だけでは無理だよ。
データベースを外に持ち、各ユーザーのマクロブックから、
同時にアクセスするようなシステムが必要だね」