次の日、資料を抱えた岩田部長が第1会議室に向かいます。
今日は、取締役を含めた経営戦略会議が開かれます。
この日のために彼は、システム企画室新設の議題を提起する準備を重ねてきました。
「さあ、これからが本番だぞ…」
岩田部長は大きく息を吸い込むと、会議室のドアノブを力強く握りしめました。
「岩田さん。
今頃、経営戦略会議の真っ最中か…」
客先からの帰り道、オーグチさんが一人、営業車の中でつぶやきます。
「システム企画室の新設は正直、五分五分と言ったとこだろーな…。
あの社長を説得するのは、一筋縄ではいかないだろうからなあ…」
交差点の信号が赤に変わります。
オーグチさんはゆっくりと車を停止させました。
「ブイビーエーによる改善効果は、資料を見れば誰もが納得できるはず…。
残業が減ったり人員が減ったりと、全社的なコストダウンは、はっきりと数字に現れてる。
あとは経営陣が新しい方向に向かって、思い切って舵を切れるかどうか……だけなんだよな」
信号が青に変わります。
彼は大きく息を吸い込むと、アクセルを力強く踏み込みました。
その頃、星くんは会社のデスクで、PCとにらめっこをしています。
「(今ごろ八木のやつ、マンションで作業を進めてるのか。
…正直言って、うらやましいなあ。
…ウチの会社もIT化が進めば、将来リモートワークで在宅勤務……なんてことも、あるのかな?)」