その頃、喫茶店ではまだ、社長が取引先の若専務とおしゃべりを続けています。
「…それでは仮にだね。
君の会社の若いのが数名、VBAが達者だとしたら…君はどうするかね?」
「それは嬉しい限りですね。
そうですねえ……彼らに通常の業務より、VBAによる業務改善を優先してやらせますね。
…彼らの能力を利用しないのは、もったいないですからねえ……」
そういいながら若専務は、社長に顔を近づけると小声でささやきました。
「……あと、ヨソの会社に盗られないように注意しますね。
そういった優秀な人材は、その気になれば、条件のいい会社にいつでも転職しちゃいますから…」
ニヤリと笑う若専務の顔を、社長は仏頂面で見つめています。
「…なるほど。
どの会社でも重宝するほど、VBAのできる人材は貴重だということか…」
社長は上着から長財布を取り出すと、テーブルの伝票を手にしました。