「水木さん、意外とがんばってるじゃない。
ブイビーエー」
オーグチさんは二人を眺めながら、泉先輩に声をかけます。
「ふん。いったい何の気まぐれかしらね?
……ミズっち」
キーボードを打つ手を止め、彼女はぶっきらぼうにそう言います。
「相変わらず、苦手なんだ?彼女のこと」
「べーつーにーー。
苦手なんかじゃありませんけど?」
泉先輩は再びカタカタとキーボードを叩き、コードを入力し始めます。
「……あのときのこと、まだ気にしてるんだ?
入社1年目の、社員旅行のときだっけ?
あれは、君が悪いんじゃなくて……」
そう言いかけたオーグチさんの横顔を、泉先輩がギロリとにらみます。
「社員旅行?1年目の?
……いったいなんのお話かしら?
みなさんで楽しく盛り上がった、記憶しかございませんけど??」
半笑いを浮かべながら強面で語る彼女を見て、オーグチさんはあわてて引き返していきました。