「失礼しました。
会議の前に、岩田部長と色々話しまして…、どうも私の考え違いがあったみたいです」
「考え違い?」
「はい。私は彼らが、基幹システムをVBAに置き換えようとしている…とばかり思ってたのですが、
実際はそんなことはなく、基幹システムとVBAの相乗効果を狙い、業務効率化を目指している…という話でした」
穏やかな表情で語る梶田部長を、冷ややかな目で社長は見つめます。
「ふん。私は元々VBAについては、やぶさかではなかったんだ。
それをキミが、うるさく言うもんだから…。
まあいい。
岩田部長と協力して、業務効率化をどんどん進めてくれ。
ウチのような会社でも、IT化の波を無視することはできないようだからな…」
社長室のドアを開けながら、社長はそう言いました。
「さてと。星くん、終わったら来てくれと言ってたわね」
帰り支度を終えた水木さんが、辺りを見渡します。
星くんと目があった彼女は、ブンブンと手を振りました。
「水木さん、お疲れさまです。
岬さんのレクチャー、いかがでした?」
「わかりやすかったわよ。
彼女、本当に説明がうまいわね。
いい講師になれるわよ」
「あはは。転職されたら大打撃です。
あまりそれ、言わないでくださいよ」
星くんは笑いながら、彼女をミーティングスペースに案内します。