その頃、会社近くのファーストフード店では、昼食を終えた岬さんと森川くんが、おしゃべりを楽しんでいました。
「…水木さんは、あたしが総務にいたときの先輩よ。
電話の応対から、名刺の渡し方まで、手取り足取り教えてもらったの。
ちょうど今の、キミとあたしのような関係ね」
「そうだったんですか…じゃあ、俺の大先輩ですね。
水木さん、VBAのほうはどうでした?」
「興味津々だったわよ。
昔はそんなことなかったんだけどね。
……まあーあの頃は、COBOLで開発した基幹システムが、社内で唯一のシステムだったからねー」
岬さんは食後のアイスコーヒーを飲みながら、昔を思い出します。
「基幹システム…リニューアルの話は無かったんですか?」
「あったみたいだけど、お金がかかるじゃない…すっごく。
ウチの経営状態では、手が出なかったみたいよ」
「だからエミュレーターで運用してるんですか…。
なんとかならないんですかね?」
「難しいんじゃない?
…そこでVBAのサブシステムに期待!…ってわけなのよ!」
岬さんは森川くんの顔を見つめ、ニンマリと笑いました。