無事、一仕事をなし終えた星くんは、ボーッとしながら昼休みを楽しんでいました。
「おーい、星。ちょっと来てくれー」
昼休みも終わりかけの頃、星くんは岩田部長に呼ばれます。
「はい、部長。なんでしょう?」
「聞いたぞ。おまえ、VBAを使って泉くんの仕事をアッという間に終わらせたんだって?
やるじゃないか、星」
「ぶ、部長…。どーしてそのことを知ってるんです?」
驚いた様子で、星くんはたずねました。
「どーしてって、江口くんが会社中で言いふらしまわってるぞ。
なんでも、人がやったらタップリ3日はかかる処理を、ほんの一瞬で終わらせたって…
そりゃもう、まばたきしてる間に作業が終わっちゃったんだってな?」
「…あいつ…ぺらぺらと余計なことを…」
星くんの脳裏に、言いふらしまわってる江口さんの姿が浮かびました。
「そこでだ。ホントにVBAってのがそんなにスゴイのなら、
ウチの部の業務をすべてVBA化しようと思ってるんだがな…どうだ、星。いけそうか?」
「…す、すべての業務をVBA化ですかぁーーー!?」
星くんは、目をひんむきました。
「あたりまえじゃないか。
VBAで仕事が速くなるのなら、すべての業務をVBA化したほうがイイに決まってるだろ。
まあ、すぐ返答しろとはいわん。2~3日やるから、その間によく考えといてくれ」
星くんは、ひんむいた目を白黒させています。
「で、でも…でも…部長…」
「ああ、おまえの今やってる業務との兼ね合いなら心配するな。
別に、おまえの業務は他の人間にやらせたってかまわないんだから…。
これが軌道にのれば、いずれ全社的な動きになるかもしれん。
うまくいけば社長賞ものだぞ。期待してるからな!星!」
もうすでに社長賞を獲ったかのような顔つきで部長はいいました。
「…わ、わかりました部長…。少々お時間をください…」
星くんはドンヨリとした表情で、そう答えるのが精いっぱいでした。