翌日、会社の門をくぐる星くんの胸中は穏やかではありませんでした。
「…部長は2~3日の間に返事してくれっていってたけど…。
あの部長がホントにそんなに待ってくれるだろうか…」
事務所のドアを開けた星くんは、岩田部長の席をチラッとみます。
「あれ?部長いないぞ。今日は休みなのかな?」
星くんはホッと胸をなでおろしました。
もう少しでお昼休みになろうかというときです。江口さんがやってきて、
「星さん、岩田部長が2Aの会議室に来るようにいってましたよ」
そう告げました。
「ええっ!?部長、今日、休みじゃないの??」
「いや~休みじゃないっすよ。それじゃ、お願いしますね」
江口さんは用件を伝えると、そそくさと行ってしまいました。
2Aの会議室に向かう星くんのわきに、イヤな汗がジトーッとにじみます。
星くんが会議室のドアをノックしようとした、まさにそのときです。
「それじゃあ、困るんです!」
会議室の中から、泉先輩の声が聞こえました。
「失礼しまーす…」
緊張しながらもドアをノックして会議室の中に入ると、岩田部長と泉先輩がいます。
泉先輩は心なしか、むくれているようでした。
「おお星、昨日話したVBAによる業務改善の件なんだが…どうだ?いけそうか」
「えっと、それはですね部長…あの…その…」
しどろもどろになっている星くんに、岩田部長が切り出します。
「…おまえが気にしてるのは、業務システムを開発するのに時間がかかるということや、
システム化する業務の優先順位をつける必要があるとか、そういったことじゃないのかね?」
「へ?」
今まさにいわんとしたことを先にいわれ、星くんは目を丸くしました。