「な~にしてるんですか?…ほ・し・さん!」
知らないうちに岬さんが、星くんの背後にひょっこりと立っています。
「わわっ!…びっくりした…岬さんか。うん、ちょっとシステムのことでね…」
「…ふ~ん、どれどれ?」
岬さんがPCの画面をのぞきこみました。彼女の顔がすぐそばにきて、星くんはドキンとします。
「…ああ…これかい?これはVBAのプログラムさ…見ても何が書いてあるかチンプンカンプンだと思うけど…」
星くんがフーッとため息をつきます。
「…カウンタの終了値は固定値じゃなくてEndプロパティで取得したほうがよくないですか?
あとセルの指定も'Range'じゃなくて'Cells'のほうがすっきりしますよ」
星くんはギョッとした表情で、岬さんを見つめました。
「み、岬さん…VBA…わかるの…!!??」
岬さんはテヘッと舌を出しました。
「…ほんのチョットです。星さんに比べたら私なんて…まだまだヒョッコですよ」
「で、でもなんでVBAのことを知ってるんだい?」
星くんのひたいに汗がじんわりとにじみます。
「…あたしVBAの資格試験を受けようと、少し前からVBAの勉強をしてるんです。でもなかなか難しくて…。
星さん!今度あたしに、VBAのこと教えてくださいね。約束ですよ!」
そういうと、岬さんは書類を持ってパタパタと事務所から出ていきました。
「………………」
星くんは固まったまま、彼女の後姿をただボーゼンと見送り続けるだけでした。