八木くんが画面をExcelに切り替えると、アクティブシートのA列にテストデータが作成されています。
「よしよし。ちゃんとできてるかな…?」
八木くんは、ワークシートをスクロールさせながらテストデータを確認していきます。
八木くんのいったとおり、20000件のテストデータが作成され、ところどころ赤のフォントに変更されています。
「うん…大丈夫そうだ。俺の作ったプログラムは、もういらないから消しといて…。
じゃあ星、おまえの作ったプログラムを実行してみろよ」
「…わ、わかったよ」
星くんはゴクリとノドを鳴らし、ふるえる指で[F5]キーを押しました。
「ポチッ」
カーソルが一瞬、砂時計になったかと思うと、すぐに通常のカーソルに戻りました。
「わ!わ!押しちゃった!」
「あはは、大丈夫だよ。Excelの画面で実行結果を確認してみよう」
星くんは、アクティブシートのテストデータをスクロールさせ、実行結果を一つ一つ確認していきます。
画面を食い入るように見つめる星くんに、八木くんがたずねました。
「どうだい?星。おまえが望んだ通りの結果になっているかい?」
最後まで確認の終わった星くんが、興奮した口調で叫びました。
「す、すごいよ…八木。ホントに2万件のデータの処理があっという間に終わっちゃったよ…。
うん!これでいい。これをやりたかったんだ!泉先輩、よろこぶよ。きっと!」
満面の笑みを浮かべる星くんに、八木くんがしっかりとくぎを刺すことを忘れません。
「よかったな星。
でもおまえの作ったプログラム、テストには合格したけど、プログラムとしてはまだまだ未完成だよ。
なぜなら、このプログラムは決められた回数しか繰り返し処理を行わない。
処理したい件数は、データによって毎回異なるはずだよね。
なら、繰り返し回数はVBAが、自動的に判定するようにしたほうがベターだよ。
あと、このプログラムにはエラーが発生したときの処理が記述されていない。
だからなにか、想定外の事態が発生したとき、処理の途中でプログラムが停止してしまうよ。
まあ、今回のケースでは、そこまでシビアに考えなくてもいいけどね」
「そっか…。VBAの世界ってのは、やはり奥が深いんだね」
星くんは、神妙な顔つきでうなずきます。