部長の気がかりの正体
「…ちょ、ちょっと待ってください部長。
なんで急に、そんな話になってるんです?」
「急ではない………少し前から考えていたことだ。
星、VBAのシステムはもう一時しのぎの業務改善ではない。
れっきとした業務の中核を担う存在になりつつあるんだ。
おまえ…これから先のことを考えたことはあるか?」
部長は真剣なまなざしで、星くんを見つめます。
「…こ、これから先…ですか?」
「そうだ。今から、5年後、10年後に、いったいいくつのVBAのシステムが稼働していると思う?
そして誰が、それらをメンテナンスしていくんだ?
今のメンバーで事足りるのか?
人を増やすとしたら、誰が新しいメンバーに教育を行うんだ?
VBAの専門家でも会社に呼ぶのか?」
星くんは、ウッと返答に詰まってしまいました。
「(今から5年後、10年後か…確かにそんなこと、考えもしなかったな…)」
「星、正直言うとワシは資格なんかどうでもいい。
この半年、開発が忙しすぎて、おまえの教育に十分な時間を割けなかった
…それだけが気がかりだったんだ。
だから今回、試験勉強を通して、おまえにぜひVBAの体系的な知識を身につけてほしい、
ただそれだけなんだ」
表情一つ変えず話続ける部長を見て、"これは本気なんだ"と星くんは確信します。
「…で、でしたら部長、試験勉強だけで特に受験はしなくてもいいのでは…?」
「…それでは本当に知識が身についたかどうか判断できんだろう?
合格することで初めて、客観的に証明できるんじゃないか」
部長の話はもっともです。星くんはグーの音もでません。