あたしの好みと一緒?
「…いただきまーす。
………あ、おいしい」
岬さんの様子を見て、八木くんが小さくガッツポーズをとります。
「(豆はマンデリンかトラジャかしら…?
やだ、あたしの好みと一緒じゃない…)」
岬さんは若干こわばった表情で、八木くんに微笑みかけます。
「よし。コーヒーを飲んだら、早速勉強を始めるとするか」
星くんが、二人に向かってそう言います。
星くんは岬さんに借りたベーシックのテキストを、食い入るように見つめています。
…ワークシート「Sheet1」のセルA1を間違いなく指定するには、
次のようにブックも明らかにしなければなりません。
Workbooks("Book1.xlsx").Worksheets("Sheet1").Range("A1").Value = 123
これは、次のような住所の仕組みと似ています。
東京都.千代田区.丸の内.3丁目.3番.1号
< ベーシック公式テキスト P40 >
「なるほどなあ…。
普段何気なく、Range("A1").Value = 123、なんてやってるけど、
それはアクティブブックのアクティブシートにあるRange("A1")だということを、
VBAが自動的に判断してくれているからなんだ…。
本来なら、どのブックのどのシートにあるRange("A1")かということを、
明示的に記述してやる必要があるのか…」
星くんは、ブツブツとつぶやきながら、テキストの要点をメモに書き写していきます。
「あー、ちょっといいですか?」
岬さんが手を挙げて、八木くんに質問をします。
「ここのコードなんですけど…」
スタンダードのテキストを広げ、コードの部分を指さします。