ヒマだし、どうしよっか?
会社を後にした岬さんは、ブラブラと駅までの道のりを歩いていました。
こんなに早く帰るのは、久しぶりです。
「…ヒマだし、どうしよっかな?……………よし!
あたし一人だけど、タラコのところに行ってやるか!」
岬さんは駅前のドーナッツ店で、お土産を買うと、
八木くんのマンションの方角に向かって歩き出しました。
ピンポーン。
八木くんの部屋のチャイムが鳴ります。
「あれ?今日は中止って、星からメールがあったんだけど…」
八木くんがガチャリと、ドアを開けます。
「こんにちは、八木さん!
星さんは仕事で忙しくて来れないので、あたし一人で勉強に来ました!」
そういうと彼女は、お土産のドーナッツを八木くんに差し出します。
「え…?え…?岬さん一人なの?
………えっと、まあ…とにかく上がってよ」
八木くんは、彼女を部屋の中に招き入れました。
「(………えっ?…これってひょっとして…チャンスですか??)」
八木くんの心臓が、バクバクと鳴り始めました。
岬さんは、いつものように部屋の隅にちょこんと座ります。
「その駅前のドーナッツ、おいしいんですよ~~~」
「は、はぃ。
…いま、八木特製ブレンドを入れますから、ちょっと待っててくださぃ」
八木くんの声が、裏返っています。
動揺しているのが、はたから見ても丸わかりです。
「(お、お、俺の部屋で…岬さんと、二人っきりだってえ!!??
………ほ、星、俺はいったい、どうすればいいんだぁ!!??)」
八木くんは星くんに、今すぐ連絡をとりたい衝動に駆られました。