うまく話してるかしら?
「…パフェでも頼もうかしら…。
ねえ、会社で勉強すれば、残業代がついたじゃない。
なんで、わざわざ喫茶店にしたの?」
岬さんが、しょんぼりしながら答えます。
「すみません。
残業で勉強していると、また岩田部長が根掘り葉掘り、たずねてくるような気がしたもんで…」
「にひひ。まあ、部長ならありえるわねえ。
……星くん、八木っちにうまく話してるかしら…」
「なんだって!そんなやり方で…!?
そ、それって、パパパ…パワハラじゃないか…!!」
八木くんが興奮した表情で、そう叫びました。
「…いや。そこまで悪気はないと思うよ。
VBAのことになると、ヒートアップしちゃうんだよ部長。
普段は、クールなんだけど…」
星くんが、両手を前に出して八木くんをなだめます。
「それで……要するに、俺におまえの会社の面接を受けろ、とそう言ってるんだな」
「うん。仕事は、VBAを中心とした業務を用意するってさ。
正直、そんなに悪い話でもないと思うんだけど…どうだい?」
「……………」
八木くんは、押し黙っています。
「なんなら2~3日、待とうか?
すぐには、回答しづらいかもしれないし…」
「いや…。その必要はないよ。
答えは、ハッキリしている。"ノー"だ」
八木くんは、静かな口調でそう答えました。
「…岬さんの件で、怒ってるのかい?」
「…いや。さすがにそれはないよ。
それとこれとは、話が別だ。
……正直、今のご時世に、ありがたい話だとは思っている。
だが、星、おまえも知ってるだろ。俺には夢が…」
星くんはフーーーッと、大きく息を吐き出しました。
「ああ、もちろん知ってるよ。
おまえの夢も、性格も……長いつきあいだしな。
…お前と同僚になれるかも…と、少し楽しみだったんだけどな」
星くんは、兄が弟を見守るような視線で、八木くんを見つめました。
「すまん」
八木くんは申し訳なさそうに、うつむきました。