社長賞の行方は?
星くんたちが満を持して申請した"生産計画管理システム"は、社内から高く評価され、
社長賞の次点にあたる"第一級改善賞"を獲得しました。
同時に、VBAで開発したシステムが高い改善効果をもち、短期間にコストダウン、
工数削減を実現できるという事実を、経営トップ・役員層に強くアピールする結果となりました。
「あれ以来、岩田部長。
ますますシステム開発に熱を入れるようになっちゃって…」
「はは…、そうですね。
でも第一級改善賞ってすごいじゃないですか。
3年ぶりだそうですよ」
「そうね。副賞が30万ってところを除けばね。
まあ、満足しているわ。
おかげで、業務改善部隊のPCも新調できたし、モニタも大きなやつに替えられたしね…」
泉先輩が若干、自嘲気味につぶやきます。
二人は、資料室の前にたどりつきました。
「荷物持ってくれてありがとね星くん。
じゃあ、残業…がんばってね」
星くんの手をギュッと握ると、泉先輩は資料室の中に入っていきました。
次の日の昼休み。
岩田部長が事務所に入ると、中はガランとして岬さんが一人いるだけです。
彼女は熱心に本を読んでいました。
「なんだ。岬くん一人だけか。
ほかの連中はどうしたんだ?」
「あ、はい。社内行事に使う備品の買い出しで、みんな出かけてます。
私は居残りで、電話番でーす」
「そうか…それはごくろうさん。
…岬くんはいつも、昼休みなのに仕事の本を読んでるな。
感心。感心」
「あ、これですか?」
岬さんは読んでいた本を、岩田部長に手渡しました。
「仕事の本というか…。
あたしVBAの資格をとりたいと思ってるんです。
これはそのテキストです」
受け取った本をパラパラとめくると、岩田部長の眼鏡がキラリと光りました。
「ほう、VBAには資格試験があるのか…。
その話、もっと詳しく聞かせてくれないかね?」
岩田部長は興味シンシンの様子で、隣の席に腰を下ろしました。