きちんと理解しているのか?
「星!おまえ、この間の話をきちんと理解しているのか!?
ワシは、資格試験を通して、VBAの基礎を学んでほしい!と、いったはずだ。
資格を取ることが目的じゃない、勉強して体系的な知識を身につけることが目的なんだ!
…それを………はき違えおって!!」
星くんはぐうの音も出ません。
岩田部長の言うとおりだからです。
彼はこの件に関して、完全に本質を見失っていました。
「…部長のおっしゃる通りです。心から反省しています。
…次は、きちんと学習し、そのうえで受験します。
本当に申し訳ありませんでした」
部長は星くんの顔をのぞきこみます。
フーッと息を吐くと、ズレた眼鏡をかけなおしました。
「たのむぞ星……おまえには本当に期待してるんだからな」
席に戻ってきた星くんのところに、オーグチさんがやってきました。
「星、試験残念だったな。
まあ、調子の悪いときくらい誰にだってあるよ。
…部長に確認したんだけど、既存システムの修正要望は受け付けてもらえるんだって?
前に作ってもらった、見積もりシステムなんだけど…」
オーグチさんの依頼はこうです。
「…とまあ、こんな具合に修正してもらいたいんだ。
試験勉強の合間に、ちゃちゃっと息抜きでやっといてくれよ」
「(ぶっ…!これって"修正依頼"じゃなくて、完全に"機能追加"だよ………
とまあ、オーグチさんにそんなこと言ってもしょーがないか…)」
星くんはやれやれといった顔で、ハーッとため息をつきます。
「わかりました。少々時間がかかりますが、よろしいですか?」
「オッケー!オッケー!助かるよ、星。
じゃ、よろしくな!」
オーグチさんはごきげんな足取りで、外回りの営業に出かけていきました。