2つのボタンはいらない
「そもそも、修正するデータを選択しているのに、
そこからさらにボタンを押すという操作自体が無駄なんだよな。
データを選択したら、そのタイミングで修正フォームが開けばシンプルだろ?」
「具体的には、どうするんです?」
「各データのオーダーNoのセルをダブルクリックしたら、そのオーダーNoで修正フォームを開く、
オーダーNoが入力されていないセルをダブルクリックしたときは、新規データとして入力フォームを開く…、
どうだい?これなら、上の2つのボタンはいらないだろ?」
星くんは、自分が考えていたアイデアと同じアイデアを、オーグチさんに指示され驚きます。
それと同時にイベントプロシージャが、ユーザービリティを大きく改善するという予感が、
確信へと変わっていくのを感じました。
「…いいですね!それ!」
「だろう?こないだ、規格の一括チェックの呼び出しに、ダブルクリックを使っていただろ。
あれで思いついたんだ。
選択するたびにフォームが出るのは困るけど、ダブルクリックなら、
フォームを出したいときに意図的に表示させることができるからな」
星くんはオーグチさんが、思っている以上にシステムの細かいところまで、
よく観察していることに気が付きました。
しかも、彼はアイデアマンです。
オーグチさんに水平展開をまかせた岩田部長の判断は、さすがだと思いました。
「どうだい、星?いけそうかい?」
「はい。大丈夫だと思います」
「そうか!よかった。
じゃあこれも、ある程度作業が進んだら、実際に動くところを見せてくれ。
このやり方で評判が良ければ、他のシステムにもどんどん水平展開していこう」
オーグチさんは席を立って、外回りの準備を始めました。
「じゃあ、星。今回もよろしく頼んだよ」
そう言うと彼は、イソイソと事務所を飛び出していきました。