岬くん。悪いんだが…
定時のチャイムが鳴り響きます。
星くんはPCの電源を切ると、泉先輩と岬さんのもとに歩み寄りました。
「先輩、岬さん。今日も、八木のところで勉強会やりますか?」
「行くわよー」
「はい。私も行きまーす」
2人は帰り支度をしながら、うなずきます。
ちょうどそのとき、岩田部長が事務所のドアを開け、中に入ってきました。
「……そうだ、岬くん。
悪いんだが、今日は1時間ほど残業をしていってもらえるかな?
まとめてもらいたい、資料があるんだ」
唐突に、そう告げました。
岬さんは、星くん、泉先輩と顔を見合わせながら、しょんぼりと答えます。
「…えっと、そのう……。わかりました、残業ですね」
八木くんのマンションに向かう途中、泉先輩が星くんに話しかけます。
「岬さんに残業なんて、めずらしいわね。
いつもなら、真っ先に私に言うのに…」
「そーいえば、確かにそうですね。
……それにしても八木の奴、さぞかし…」
「さぞかし…何?」
話し込んでいるうちに、2人は八木くんの部屋までたどり着きました。
星くんがチャイムを鳴らします。
「はい。はい。はい。待っておりましたよ~」
八木くんがハイテンションでドアを開けます。
彼は、岬さんの姿が見当たらないことに気がつくと、キョロキョロとあたりを見回しました。
「あれ?岬さんは?」
「うん、なんか急に残業を言いつけられちゃってね。今日は休みだよ」
「え~~~~~~っ!!??」