打診してくれないか?
「彼にぜひ、ウチの会社の面接を受ける気が無いか、打診してくれないか?
もちろん仕事は、彼の得意なVBAを中心とした業務が前提だ。
…やってくれるな、星」
「へ??…ウチの会社で……えええ~~~!!??」
岩田部長の一言に、星くんは白目をむいてひっくり返りそうになりました。
「い、いえ部長。
八木にはなんというか…自分で起業して、仕事をするという夢…というか、野望があるみたいなんです。
ウチの会社に就職は……、してくれないんじゃないか…と…」
「そんなこと、実際に聞いてみないとわからんだろう?
今はそれが夢でも、現実に就職のチャンスがあれば、あっさり変わるかもしれんぞ」
確かに岩田部長の言うことにも一理あります。
星くんはドンヨリした顔で、八木くんに打診する旨の約束を、部長と交わしました。
事務所に戻った星くんのところに、岬さんが駆け寄ってきます。
「岩田部長のお話って、ひょっとして八木さんのことでした…?ごめんなさい。
昨日、残業の時に勉強会のことを根掘り葉掘り聞かれて…。
八木さんのこと、洗いざらいしゃべっちゃったんです…」
「岬さんを指名して、残業させたのはそのためだったのか…。
いいよ、気にしなくても。別に隠すようなことじゃないんだから…。
ただ、八木をウチの会社に引っ張ってこいには、驚いたな…」
岬さんが、"案の定"という顔をします。
「やっぱり…!岩田部長のお話って、そのことだったんですね」
「なになに?八木っちのことで、何かもめてんのー?」
泉先輩が、二人の間に割って入りました。
「…えーーーっ!!八木っち、同僚になっちゃうの!?」
「い、いえ。まだ、八木の意思を確かめてないのでなんとも…。
とりあえず今日、八木に話してみることにします」
星くんは、そう力なく答えました。