オーグチさんはどこ?
星くんは、フーッと息を吐き出しました。
「…規格の列番号を格納する変数cは、この後の繰り返しでも使うから、
最後に"c = 0"と、初期値に戻す…と、
これでオッケーのはずだ」
星くんは、材料費のシートにテストデータを作成すると、
見出し行の「規格」セルをダブルクリックしてコードを実行します。
「やった!正常に動いているぞ。
…と、オーグチさんに、これで問題ないか確認してもらったほうがいいな…」
星くんは、キョロキョロと周りを見渡します。
「…いないな。どこいったんだろう?」
席を立った星くんは、事務所の外に出ます。
廊下の向こうから、岬さんがこちらに向かって歩いてきました。
岩田部長に、合格の報告をしに行った帰りのようです。
「あ、星さん。今日も、八木さんのところで勉強会するんですよね?」
「う、うん…。でも岬さん。スタンダードに合格したのに、まだ勉強会を続けるのかい?」
岬さんが、眉毛をハの字に曲げます。
「あったりまえじゃないですか。
資格をとったくらいで……VBAの勉強に、終わりはないんですから!」
そそくさと立ち去ろうとする岬さんがピタリと立ち止まり、星くんの方を振り返ります。
「…おとといの件ですけど。
八木さんとは別に、何もありませんから。
…まだ星さんのこと、全然あきらめてませんから!」
そういうと彼女は、パタパタと廊下を走り去っていきました。