いつの間にやら…
「…よし。次は"入力"ボタンを廃止して、リストボックスの選択で入力できるように修正を…」
「星さん!定時になりました!
今から一緒に、八木さんのところに行きますよ!!」
いつの間にやら星くんの背後に、岬さんが立っています。
「うひゃあ!!…岬さんか、びっくりしたあ!
…えっ?もう定時になったの?」
星くんは、壁の時計を確認します。
針は17時を回っていました。
作業に夢中で、定時のチャイムが鳴ったことに気がつかなかったみたいです。
「…もう、こんな時間か…。
岬さん、先に正門のところで待っててよ」
星くんはデータを保存してPCの電源を切り、帰り支度を始めます。
八木くんのマンションに向かう途中、ふと岬さんが星くんにたずねます。
「星さんと八木さんって、学生時代からの親友なんですよね?
…二人は、どんな学生だったんですか?」
「へ?…な、なんだい。いきなり」
星くんはいぶかしげな顔で、岬さんを見つめます。
「そうだなあ…、二人とも全然変わってないなあ。
…八木は昔から面倒見のいいやつで、何か頼むとイヤイヤでも引き受けてくれるんだよ。
…それでいてそのうち、あいつの方が夢中になってのめりこんじゃって、
こっちは置いてけぼりだよ。
なんだかんだ言って、あいつがんばり屋だからなあ………
ん?岬さん、どうしたの」
岬さんは星くんの隣で、くっくっと必死になって笑いをこらえていました。